先日、Makerムーブメントのお祭りであるMakers Faire Tokyo 2013で、素敵な取り組みをされている方に会いました。
藤本直紀さん。
KULUSKA(クルスカ)というものづくりユニットをされている方です。
今回は、「旅するデザイン」というテーマで出展されていました。
ブースでご本人から直接聴かせて頂いた内容は、詳細な記事にもなっていたので、ご興味ある方はぜひ。
オバマのおばあちゃんに届いた、ファブラボ鎌倉のレザースリッパ――「つくる楽しさ」とアイデアをシェアする文化が次なるイノベーションを生む!|〈ものづくり〉は、まだ僕らを豊かにできるのか?|ダイヤモンド・オンライン
藤本さんは元々、革を扱う作り手で「手でつくること」を大切にしていました。ある日、福祉作業所における、デザインディレクションを行うことがきっかけとなり、ものづくりの難しさと面白さに向き合うことになります。
共創するものづくりの在り方を考えた末、
「レーザーカッターで革の型紙の裁断と縫い穴を一度に開けてしまえば、あとは針と糸を使って誰でも簡単に自分オリジナルの本格的な革製品が創れるのでは?」
と気づき、地元の鎌倉にあるFab Lab*を利用して、レーザーカッターや描画ソフトについて学び、レザーサンダルの型紙をAdobe Illsutoratorでデザインしたのがコトの始まり。
*Fab Lab(ファブラボ):「ほぼあらゆるもの(”almost anything”)」をつくることを目標とした、3Dプリンタやカッティングマシンなど多様な工作機械を備えたワークショップ。世界中に存在し、市民が自由に利用できる事が特徴。Wikipediaより一部引用
ユニークなのは、彼はものづくりの敷居を下げる目的で、そのデザインデータをオープン、つまり誰でも利用できるようにしたことです。 *参加にはクルスカが設定しているクリエイティブコモンズライセンスへの同意が必要です。
それが、今回出展されていたテーマ「旅するデザイン」に繋がっていきます。
「旅するデザイン」では、KULUSKA OPEN DESIGN PROJECTというプロジェクトに賛同してくれた参加者の方と共に一緒につくられています。彼のつくったデザインデータを使って、色んな地域の色んな人達が自分なりのサンダルをつくり始めたのです。






もともとのきっかけは、ケニアのFab Labから届いた一通のメール。
世界中のFab Labを回っているノルウェー出身のJens Dyvik (イェンス・ディヴィック)という方が鎌倉のFab Labを訪れた際に、たまたま藤本さんがレザーサンダルをFab Labのレーザープリンターを使ってつくっていました。

(どうでもいいですが、イケメンですな。ちなみに履いているのはKULUSKAのサンダル。)
その後、ケニアのFab Labを訪れたイェンスさんは、現地のケニア人スタッフからラボの運営が資金難により厳しいことを相談されます。
「現地のFab Labの設備をうまく使ってケニアにちなんだお土産をつくり、それを観光客に販売することで資金とできないか?」
そう考えたイェンスさんは藤本さんのレザーサンダルを思い出し、あのサンダルのデザインを使わせてもらえないか?というメールを藤本さんに送ります。藤本さんは、二つ返事でレザーサンダルのIllustratorファイルを添付し、鎌倉からケニアにメールで返信。
アフリカの大地は乾燥していてひび割れているので、
『これを買えば、いつでもアフリカの大地と共にいられる』
というコンセプトで、観光客が自分の国に戻ってもアフリカの大地を思い出せるように、藤本さんのデザインを元にして型紙を加工。また暑さのため、つま先の部分もカットしたりして、独自のデザインに仕上げました。


それが結果として色んな経緯を経て、なんとケニア在住のオバマ大統領のおばあさん(サラ・オバマさん)にまで届けられることになるぐらいの反響を呼ぶことに。(よく見るとサンダルにオバマの顔が入っています・笑)
ちなみにサラ・オバマさんからは「追加であと10足持ってきてくれないか」と言われたそうです。

上記ダイヤモンド・オンラインの記事より
イェンスさんがつくったビデオにも紹介されています。(〜40秒ぐらいまで)その後、デザインのオープン化の可能性を感じた藤本さんは、スリッパのデザインデータを土台として「自分で考えたアイデアをデザインし自分でつくる」ということを提案し続けています。
これまで「自分でつくる楽しさを分かち合う」活動をワークショップを通して伝えてきたKULUSKA。
「旅するデザイン」においても鎌倉や仙台でオリジナルのレザーサンダルを創るワークショップ開いています。次回は広島での開催を予定しているとのこと。彼のデザインを元にしたオリジナルのサンダルづくりは、だんだんとその輪を広げています。

誰かがつくったものをみんなに無償で共有し、それを自由に使って各自がオリジナルの創作物をつくっていく。
オープンソースを始め同様の取り組みは、デジタルな世界では以前からありました。クリス・アンダーソンの著作に端を発したMakersブームで、それがリアル世界にも広がっていることは知ってはいましたが、個人的には3Dプリンターで工作!みたいな話ばかりだと思っていました(不勉強ですいません・・・)。
ハードウェアのプロトタイピングや、フィギュアなどのモデリングだけでなく、もっと広義なデザインが可能になってきているんですね。今回、藤本さんとKULUSKAの取り組みを伺って、革製品などのハンドクラフトのものにまでそういったオープン化の波が広がっているって面白いなーと思いました。
この本にもKULUSKAの事例が記載されているそうです。
全世界を結ぶインターネットのインフラ、3Dプリンタやレーザーカッターなどの工作機械の低価格化によって、モノをデザインし、共有し、そしてつくることの敷居が劇的に下がっていく。
”クルスカの 2人は、〈半完成品〉をつくることができるデジタル加工に、大きな可能性を感じているという。
「買って終わりではなく、自分でつくることができるようになれば、自分で直すことができますし、よいものが何かわかるようにもなります。自分が心からほしいものをつくることも可能です。つくる側にならなければわからないことを、多くの人に分かち合っていきたいんです」”
上記ダイヤモンド・オンラインの記事より
”私たちは、大量消費ではなく長く大切に使えることや、作りたい人を支援する形のひとつとして、
『作り手でなくとも』作りやすいものづくりを目指し、プロダクト開発やワークショップを開催しています。ものづくりはコミュニケーション手段でもあると捉えており、ワークショップなどで時間を共にさせていただき「もの」が「場」になることを願っています。”
(『』はカジケン)
KULUSKAのWebサイトより
”インターネットを通じ「デザイン」を共有、ダウンロードでき、改良、製作が容易になることで、どういったことが起こるのか?
日本国内、そして世界中その土地土地で、ひとつのデザインがどのように変化していくのか?もっと追求していきたいという思いが強くなってきました。”
KULUSKAのWebサイトより
いいですねー!面白い時代になってきました。自分がデザインしたものが世界中の人に使われたり、逆に色んな国や地域の人がデザインしたものを使って、自分オリジナルのものをつくってみたり。そんなことがとても気軽に出来るようになる日はそう遠くないのかも知れません。
旅するサンダルのこれからが、とても楽しみです。
P.S.
今後、KULUSKAでは全国にこの取り組みを広げていけないか?と考えているそうなので、ワークショップのご相談など、気軽に連絡ください、とのことです。下記ページ真ん中に問い合わせフォームがあります。ご興味ある方はぜひ。
http://kuluska-japan.com/blog/about/
Facebookページもあるので、興味ある方はまずは定期的に情報を受け取ってみても良いかもです。
kuluska Facebookページ
追記(2013年11月6日 9:27am):藤本さんから下記の情報を頂きました!追記として記載しておきます。
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クルスカでは新たなニュースとして、スリッパのリサイザーアプリの開発を行っています。アプリ開発は、デザイン、イラストレーション、エンジニアリングと多岐に渡り活躍している「phocus」が行っています。彼らはポーランドと日本を拠点に活動しているクリエイター集団です。
http://phocus.pl/
また、参加者の方のデザインとコンセプトの詳細などを発表する場としてプロジェクトページも制作中です。
現在進めているプロジェクトでは、個人が持つアイデアをオープンにすることで、今まで想像もしなかったデザインが生まれています。私たちは、オープンデザインを闇雲に進めるのではなく、環境をつくることからアプローチしていきます。
そして、身体のサイズは1人1人違います。その違いを含めて「自分のサイズ(思考)に合ったものを自分でつくること」のきっかけになればと思っています。(リリースなどは、また追ってご報告させてください)
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