佐々木俊尚さんの新著「レイヤー化する世界」を読みました。
10代を読者として想定されているだけあって、文体は柔らかでとても読みやすい。ただ内容はかなり骨太です。10代、20代の若い方にとっても必読の本ですが、30代以上の人こそ読むべき本かと思います。
「レイヤー化する世界」は、この世界の新しい構造がまだ見えていない10代の若者を想定読者にして書き進めた。だからこれまでにないわかりやすさだと自負してます。
— 佐々木俊尚 (@sasakitoshinao) June 8, 2013
世界や社会の構造自体が国や会社といったタテのものから、色んなレイヤーが帯のように重なるヨコの繋がりにガラッと変わってしまう、ということを歴史的、技術的な背景から説明してくれています。そしてそのレイヤーを支えるのがテクノロジーであるということも。
本書の具体的な内容については既に色んな書評の中で出てきているので、ご興味ある方は一読を。
R-style » 【書評】レイヤー化する世界(佐々木俊尚)
Weblog3D : 前二作と、結ばれたこれから – 書評 -『レイヤー化する世界―テクノロジ ーとの共犯関係が始まる』佐々木俊尚
「新しい世界システムと情報インフラの関係」、『レイヤー化する世界』(佐々木 俊尚 著) | 未来回路.com
『レイヤー化する世界』 - 光の帯になっていく個人 – HONZ
もしあなたが日本社会に違和感を覚える若者ならば必読|『レイヤー化する世界』佐々木俊尚著 書評
内容については上記のように多くの方が書かれているので、私はこの本に書かれている「レイヤー」について具体的な私見を少し書きたいと思います。
世界の在り方が変わるということは、当然個人の在り方も変わります。
それは何か一つや二つの大きなものに帰属して生きるという時代の終焉であり、個人が色んなレイヤーでテクノロジーを利用しながら能動的に人と繋がっていく時代の始まりでもあります。
で、こういう世界がほんとにやってくるかどうか?で言えば、私の結論は
「もちろん!」
です。
「未来は既に起きている。ただ偏在しているだけ。」
という言葉がありますが、自分の周りで感度や行動力が高い人たちは明らかにこういった世界で生き始めている。
私は全然そこまでいけていませんが、そんな私ですら実例をいくつも挙げられます。
ちなみに。
佐々木さんはこのレイヤー構造の世界を認識できることを「プリズムを手に入れる」と書籍中で表現していました。
私見ですがこのプリズムを持っているかどうかを見分ける、簡単な識別方法があります。
それは、
ネット上でしか知らない(もしくは1, 2回しか会ったことがない)人を信頼できるかどうか。
たとえば、自分や周りの例をいくつか挙げてみると・・・
– 私は一昨日まで書籍の翻訳プロジェクトをしていましたが、2ヶ月一緒に仕事をしたアメリカ在住のメンバー2人とは知人を介しての紹介で、一度も会うことがないままほぼ毎日FacebookのグループとGoogle DocsとSkypeを活用して無事プロジェクト完了。ちなみにその知人自体も今まで会ったことは2回だけです。
– GWにブログ読者向けにSkypeで1 on 1で話をしてみようという企画を立てましたが、わずか数日で、職業は学生、僧侶、エンジニア、経営者、医者、ビジネスパーソン、在住の場所も、北海道、名古屋、大阪、福岡と国内だけでなく、ニューヨークやシンガポールなど、地理的、職業的に多岐にわたる人たちからご連絡いただきました。ちなみに私は自分の職歴や現在の所属などをほとんどブログ上では公開していません。
– 先日Facebook上で、あるプロジェクトのために「ご両親」と「実家」でお話をさせてもらえる人を募集したのですが、ありがたいことに数時間で10人以上から協力の申し出が。古い友人もたくさんいる中で、1, 2回しかお会いしていない方からも何名か連絡を頂きました。
– 友人がCouchSurfingを介して、深圳や台湾で外国人&初対面にも関わらず部屋に泊めてもらっていたり(かつめちゃくちゃ仲良くなっていました)。
あなたの旅を何倍も楽しくしてくれるWEBサービス「CouchSurfing」 : 【これまじ!】これ買ってまじ良かったよ!!
などなど・・・
それぞれのレイヤーで互いに何かしらの信頼があるからこそ成り立つものであることが分かると思います。
で、表現が難しいのですが、これが出来るかどうかって結局、経験の積み重ねによるリテラシーなんですよね。
リアルの場でもこの人は信頼できるかどうかの見極めって、何度も(失敗も含めた)経験を重ねて来た結果できるようになっているわけで。
このネットの向こう側に確かに存在する人を信頼できるかどうか
って、出来ない人にはほんとにできない行為です。
ちょっと違うかも知れませんが、例えるならクレジットカードをオンラインショップに登録できるか、みたいなことだと思います。一昔前までは相当忌避感がありましたし、現代ですらネットにクレジットカード情報を登録することを怖がる人が存在する一方で、Amazonを始めとしてどんどん活用して利便性を享受している人もいる。
もちろんリスクはゼロではないし、ある意味活用するためのリテラシーは当然必要です。
例えるなら、怪我が怖いから包丁使わないとか、火傷が怖いから火を使わないみたいなもの。きちんと使いこなせば、めちゃくちゃ美味しい料理ができるのに!
(ちなみに、ネットの向こう側に確かに存在する人を信頼できるかどうか、というのは裏を返せば、ネット上でしか知らない人に自分を信頼してもらえるかどうか?ということでもあります。)
いずれにしてもインターネットを介せば、距離を超え多くの人と繋がれる時代。それはつまり、ネットの向こう側にいる人を信頼できるか、逆に信頼されることができるかどうか。
考えてみれば当たり前のことなのですが、これを頭で理解するのではなく、感覚として持っているかどうか、がこれからの時代に対応できるかどうかの分水嶺となるのではないかと思います。
怖い怖い言ってても始まらない。たとえ少々の怪我をしながらでも前に進むしかない。
長くなりましたが。
10代、20代のデジタルネイティブ世代の多くは既にこういう感覚を何かしら持っているでしょう。その感覚を裏付けさらに自分なりにこれからの時代に対する視座を持てるよう、歴史と世界の構造を知るために読むべし。
30代以上は人によりますがこの感覚を持っていない人も多いので、プリズムを持っているかどうかを確かめるためにも、ぜひ一読を。
読めば必ず何かしらの示唆をきっと得られると思います。
(Kindle版もあります)
P.S.
未来についての本である以上、「ほえー、参考になったわぁ。」で終わらせては意味がありません。いやもうこんなの常識以前の話だし、とっくにワシ実践してるわ、得るもの無し!という世の中の先端を走っている人は別にして、この本をきっかけに新しく何かを始めるべき。例えば私だったら、ということで下記に3つ例示しておきます。ご参考までに(笑)
◯アクション 1:参考文献を読んでいく
読めば分かりますが、この本はあくまで入り口であって、裏には佐々木さんが読み込んでいる膨大な書籍や記事があります。10代向けの新書ということでかなり噛み砕かれたパッケージですが、(勝手な推測ですが)本当は書きたいことはこの10倍ぐらいあったんじゃないかと感じるぐらい。
だから理解がうまく出来ないところ、興味を惹かれたところについては、あとがきにある参考文献を読んでみることが大事かと思います。不勉強ながらリスト中、知らない本、未読の本たくさんありました。ただ幸いにして「産業と働き方の変化」の項目はほぼ全ての本が既読のものでしたが、どれも現代人であれば必読のものです。あの項目の本だけでも未読があれば読んでおくことをオススメします。ちなみに私は三大陸周遊記抄を買いました。
◯アクション2:読後の感想をアウトプットする
このブログで何度も書いていますが、アウトプットを前提としないインプットほどもったいないものはありません。一番のオススメは読後の感想や意見をブログに書くか、Twitterで佐々木さんにmentionを飛ばす or メールをするなどで直接感想を届けること。
読書とは本を介した著者との対話であり、そして現代においてはテクノロジーのおかげで直接著者に自分の感想を簡単に届けることが出来るわけですから、活用しない手はないです。それはまさしくレイヤー化した世界に生きるということでもあるはず。
返事を頂けることは稀かと思いますが、いずれしても感想が著者の目に触れることが前提で読書するのは集中力も理解力も段違いです。私もこのブログ更新のつぶやきをTwitterで佐々木さんにMention飛ばすつもりです。緊張するわぁ。。。
◯アクション3:行動してみる
ネット上の人を信頼できない人は、信頼できるように。それができる人は、相手から信頼されるように、一歩踏み出してみるのが良いと思います。今はオンラインサロンなども結構色々とあるので、まずはそういったところに参加してみるなどもあり。
長くなりましたが、良い読書体験となりますように。ではでは。
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